あらゆるメーカーが続々と参入し、戦国時代の様相を見せている360度カメラに、新しい製品が登場しました。ニコン製全天球カメラ、KeyMission360です。
そもそもKeyMission360自体は2016年初頭に発表されていたのですが、発売延期につぐ延期で2016年10月末にようやく発売されたという経緯があります。
発売遅延についてはメーカー側にも製造状況や製品自体の完成度など、色々事情があるとは思いますので置いておくとしまして、今回は手元に届いたKeyMission360を使ってみての感想や、他の360度カメラと比べてどのような特徴があるのかという点について注目しながら見てゆきたいと思います。
KeyMission360
まずKeyMission360がどんなカメラなのか?という点ですが、レンズが表と裏の両面に2枚搭載されており、360度天から地までを撮影できる全天球カメラです。また全天球カメラでありながら、アクションカメラのジャンルにも属する「全天球&アクションカメラ」とも呼べる製品です。
見ていて楽しい360度映像を撮影できるのはもちろんですが、アクションカメラのタフさも持ち合わせているためハードな環境でも臨場感溢れる360度動画が撮影できます。想定用途としては、静止画よりも動画を想定して作られている製品という印象です。
ここからはメーカーのウェブサイトに掲載されている製品特長をピックアップしてみます。
すべての体験を記録する4K UHD対応のリアル360°ムービー
360度映像を撮影するということは、通常の動画よりも撮影する範囲が広いということになります。つまり、カメラが高画質でないと通常のカメラと比べて画質の低い映像となってしまいます。
KeyMission360では、記録する映像の画質を4K映像にすることで360度映像ながら高画質な映像を撮影することができるようになっています。
一般的な4Kビデオカメラは、4K映像を再生できるディスプレイやテレビが限られているためその真価は比較的発揮しにくいのですが、360度映像なら4K映像の実力を余すこと無く発揮できます。
タフなミッションに挑むための防水・耐衝撃性能
KeyMission360の一番の強みはこれかもしれません。他のメーカーの360度カメラは、本体そのままでは防水耐衝撃性能がそもそも搭載されていなかったり、別売りの防水ケースを装着してはじめて水中で利用できる製品がほとんどです。
その点、KeyMission360は防水30m、耐衝撃2m、耐寒-10度、防塵とアウトドアで使うに十分なタフ性能を備えています。
また後述しますが、むき出しになっているように見えるレンズ部はレンズそのものではなく、球状のレンズカバーです。仮にレンズカバーにキズがついてしまっても、レンズカバーだけを交換すれば復活させることができます。
全天球カメラの代表作であるリコー製のRICOH THETAなどはレンズがむき出しのため、簡単にキズがついてしまう&キズが付いたら本体ごと交換するしかないタイプとなっていますので、その点を考えてもKeyMission360はアウトドアで使うにふさわしい全天球カメラと言えそうです。
アドベンチャーフィールドを拡げる、多彩なアクセサリーラインナップ
アクションカメラというジャンルの製品は想定されるシーンが多岐にわたります。例えばダイビングで水中で撮影したり、自転車や自動車に取り付けてスピード感溢れる映像を撮影する場合もあります。そのためあらゆるシーンで撮影者の動きを妨げずに撮影するかという点がとても大切なポイントとなってきます。
その点をアクションカメラは、「マウント」と呼ばれるカメラのジョイントや取り付けパーツを豊富に用意することで解決しています。
KeyMission360は全天球カメラでありながらアクションカメラでもあるので、同様に豊富なアクセサリー(マウント)を用意してあらゆるシーンで撮影できるようにしているわけです。
なお、マウントの取り付けには三脚穴を用いるため他メーカーのマウントも転用できる場合もあります。詳しくは後述します。
専用アプリが撮影や動画編集をサポート
アクションカメラや全天球カメラは、他メーカーの製品を含めてどれもスマートフォンアプリとの連携機能が充実しています。KeyMission360も例外はなく、専用のスマホアプリと連携させることでその性能をフルに発揮させることができます。
なお、KeyMissionをはじめとするニコン製カメラの大きな特長として、カメラとスマホ内データのリアルタイム同期機能が特徴的です。これはアプリのSnapBridgeの機能の1つなのですが、カメラで撮影した映像をバックグラウンドでスマホに転送してくれるという機能です。
他にもリモート撮影や、撮影画質の設定などカメラの様々な機能をスマホアプリから操作できます。KeyMission360は他のアクションカメラと異なり、本体に液晶パネルが搭載されていないためスマホアプリ無しには操作が難しい製品です。KeyMission360を使う場合には、スマホとの連携は必須と考えておいたほうが良さそうです。
仕様一覧
主だったスペックも掲載しておきます。
有効画素数 | 2389万画素 |
撮像素子 | 1/2.3型原色CMOS |
総画素数 | 2114万画素×2 |
レンズ | NIKKORレンズ×2 |
焦点距離 | 1.6mm(35mm判換算8.2mm相当) |
開放F値 | f/2 |
記録媒体 | microSD/microSDHC/microSDXCメモリーカード(市販) |
撮影距離範囲 | 先端レンズ面中央から約30cm~∞ |
入出力端子 | Micro-USB端子(付属のUC-E21以外のUSBケーブルは使わないでください)、HDMIマイクロ端子(Type D)(HDMI出力) |
HDMI出力 | HDMIマイクロ端子経由で接続可能 |
防水性能 | JIS/IEC保護等級8(IPX8)相当(ニコン試験条件による) 水深30m、60分までの撮影が可能 |
防じん性能 | JIS/IEC保護等級6(IP6X)相当 |
充電時間 | 約2時間20分 |
寸法(幅×高さ×奥行き) | 約65.7×60.6×61.1mm(レンズプロテクター含む) |
質量 | 約198g(レンズプロテクター、電池、メモリーカード含む) |
1/2.3型センサーを2つ搭載しています。これは一般的なコンパクトデジカメと同サイズのセンサーなので、カメラとしての基本性能もそこそこ高いと言えそうです。
実機を触ってみます
それではここからは実際に製品を使いながらその使用感についてレビューしてゆきたいと思います。
まずは外箱です。ブラックをベースとした高級感溢れる外装となっていますね。
こちらが同梱されている物の一覧です。結構多いですね、、
ダンボール製のVRビューアーも付属しています。ハコスコ等と同じ原理ですね。ダンボールを組み立てるとゴーグルのような形となり、ディスプレイ部にスマホをセットして使います。
まさにこういうやつが同梱されています。
KeyMission360 本体
ここからはKeyMission360本体を見てゆきましょう。
箱から取り出した本体です。前後に2枚のレンズ、側面部にそれぞれ操作用のボタン、ランプ、バッテリーカバー等がついています。
反対側。こちらはバッテリーや端子のカバーがついています。カバー開封用のロックとツマミが搭載されているのがおわかりになるでしょうか。
カバーを開けてみました。ここにバッテリーや記録用のmicroSDカード、充電用端子等が収納されています。水の侵入を阻止するためにゴム製のパッキンが搭載されています。ちゃんと二重ロックをかけておかないと、水中に入れると浸水して壊れてしまいますので気をつけましょう。またパッキングに砂粒やゴミが詰まっていても同様、浸水の恐れがありますので気をつけてください。
充電スタイル。付属品の中にケーブル、コンセント用アダプタがついていますのでそれらを使ってコンセントから充電することができます。
底面部も見てみましょう。三脚穴が付いています。この三脚穴をもって、様々なマウントに取り付けることができます。
試しに付属のベースアダプターを装着してみました。このベースアダプターは粘着テープ式となっており、粘着シートの付いているベース部については基本的に使い捨てです。つける場所の選びますので注意してください。
また、三脚穴に装着さえできれば、純正品でなくても利用が可能です。手元にあったセルフィースティックに取り付けてみましたがいい感じです。KeyMission360の底面部には変な突起部等もないので、色んな種類のマウントが装着できそうですね。
レンズ・シリコンカバーについて
カメラの四方をカバーできるソフトシリコンカバーも標準で付属しています。
装着してみました。本体カラーと同じブラック色なので違和感なく装着できますね。また撮影の邪魔にもなりません。ただ、あくまでも簡易的なものとなりますので落下させてしまったら当然レンズカバーにキズがつきます。取扱い注意なのには変わらないので気をつけてくださいね。
最初から取り付けされていた球状のレンズカバーと異なり、レンズ部が平面となっているレンズカバーも2枚付属しています。一見すると用途のわかりにくいレンズカバーですが、これは水中撮影用のレンズカバーです。
どうやらレンズが平面のほうが、水中でもぼやけにくい映像が撮影できるようです。水中と空気中では水の屈折率が異なりますが、その影響なのでしょうか。
水中用レンズカバーを装着してみましょう。まずは今取り付けてあるレンズカバーを外します。ひねると簡単に外れますよ。
装着完了!迷うこと無く付け替えができました。
撮影してみましょう
ここからは、実際にスマホアプリをダウンロードして撮影をしてみたいと思います。今回はiPhoneで操作します。基本的にはAndroidも同じはずですが、アプリのバージョン等で画面や操作方法にちょっとした差異は発生するかもしれません。あくまでもざっくりした流れを把握するためとして見ていただければと思います。
AppStoreから「SnapBridge」で検索しましょう。KeyMission360で使えるのは「SnapBridge 360/170」というアプリです。別のニコン製カメラで使える「SnapBridge」とは別物なのでご注意ください。
アプリを立ち上げると、最初にカメラとのBluetoothペアリングの画面が表示されます。KeyMission360のカメラ側の電源を入れて、ペアリング待機状態にします。ペアリング待機状態は、カメラ上部の2つのランプが交互に緑色に点滅している状態です。
アプリとカメラがお互いを認識するとペアリングが完了します。アプリ側から対象のカメラを選んでください。
これでひとまずペアリングが完了です。なお、2台目以降のスマホをペアリングする際にはカメラ上部の動画撮影ボタンを7秒間、長押しすると再度ペアリング待機状態になります。
次はアプリのホーム画面を開いてみます。
今はBluetooth経由でカメラとアプリが接続されている状態ですが、全ての機能を使うためにはBluetooth接続からWi-fi接続に切り替えなければなりません。
こういうことを言われます。面倒ですが仕方ないのでWi-fiに接続しましょう。
表示されているメッセージによると、カメラのWi-fi機能が起動されているとのことですので、スマホの設定画面を開いてカメラのWi-fiにスマホを接続します。
接続完了です!なお、Wifiの初期パスワードは「NikonKeyMission」でした。これはアプリの「カメラ > カメラ設定 > 通信メニュー > Wi-fi」から確認や変更ができます。
なお、筆者が接続したときは若干Wi-fi接続が不安定でした。その場合は、まずはカメラとアプリの再起動を試してみましょう。
それでも繋がらない場合は、よくあるパターンとして、周囲のWi-fiと混線している場合が多いです。場所を変えるか近くのWifiをOFFにしてみると大体の場合は解決するみたいです。
さて、接続完了したところで早速アプリからリモート撮影に挑戦してみましょう。ホーム画面から「カメラ > リモート撮影」でカメラビューがアプリから見ることができます。
映りましたね!これでアプリ経由で動画、静止画の撮影が可能となりました。画面に写っているのは1部分のみですが、撮影するとちゃんと全天球映像が撮影できます。またこのライブビューはスワイプで映っている場所を動かせるので、ぐりぐり操作してみましょう。
映像編集
簡単な編集はスマホアプリからも可能ですが、より踏み込んだ編集等はPCの専用アプリケーションから行う形となります。「KeyMission 360/170 Utility」というものがニコンのウェブサイトからダウンロードして使えるので、そちらをご利用ください。
Nikon | Download center | KeyMission 360/170 Utility
KeyMisson360は、他の360度カメラと比べてどうなのか
ここまででKeyMisson360がざっくりどのようなカメラなのか伝わったことと思います。ここからはKeyMisson360が他の360度カメラやアクションカメラとどのように異なるのか見てゆきましょう。
比較するのは360度カメラの定番、RICOH THETA、アクションカメラの定番であるGoPro HERO5 Black、そしてコンセプトが違いKodak SP360 4Kです。
KeyMisson360とRICOH THETAの違い
360度カメラの先駆者としては、RICOH THETAが最初に思い浮かびますね。やはりTHETAの違いといえば、活躍できるシーンの違いと言えそうです。
KeyMissionはアクションカメラとしての色が強いため、防水性能や耐衝撃性能などを備えており、ハードなシーンでも活躍します。それに対してRICOH THETAは防水性能等は備えていないものの持ち運びや撮影もしやすく、アプリの完成度も高いためカバンに忍ばせておいてちょっと撮影するといったニーズに適しています。
またどちらの機種も動画、静止画両方とも撮影できますが、KeyMissionは動画中心、RICOH THETAは静止画中心の用途に適していると言えそうです。
KeyMisson360とGoPro HERO5 Blackの違い
アクションカメラの代表格であるGoPro。その最新作がGoPro HERO5 Blackです。KeyMissonと異なり、360度カメラではないので撮影できる範囲はレンズの向いている方向のみとなります。
どちらもアクションカメラである以上、活躍できるシーンは似ていてどちらもアウトドアで活躍できます。違うのは撮影範囲でしょうか。
なお、GoProも複数台と専用のカメラ固定具を組み合わせれば360度映像を撮影することが可能です。機材の準備が大変で、かつ撮影後の映像編集が必要というデメリットはありますが、1台のレンズが担当する撮影範囲が狭いため、KeyMisson1台よりも高画質映像の撮影が可能です。とは言えこれは映像のプロがやることですので、この記事では詳細は割愛させていただきます。
KeyMisson360とKodak SP360 4Kの違い
どちらもアクションカメラと360度カメラの間を埋める製品です。KeyMisson360に一番近いポジションの製品かもしれません。
ただ、SP360 4Kはレンズが1枚しか付いていないため撮影できるのは地球儀で言う北半球のみとなります。全天球映像を撮影する場合は2台組み合わせて使う必要があります。
たくさん種類がありますので、ちゃんと自身の用途にあった製品を選んで購入したいですね。
まとめ
以上となります。
KeyMission360は、今までありそうで無かったアクションカメラと360度カメラの溝を埋める絶妙なポジションに飛び込んできたように思えます。
そもそもアクションカメラというジャンルも、360度カメラというジャンルも歴史が浅く、どのメーカーの製品を見比べてみても姿形が大きく異なり、まだまだどこも試行錯誤中といった印象です。
そんな中、カメラの大御所ニコンが投入してきたKeyMission360。発表から発売まで約1年弱という紆余曲折を経て登場した製品ですが、これからどれだけマーケットに浸透していけるか今後が楽しみです。
個人的にはアプリの完成度はまだまだ改善の余地があるといった印象を受けました。一般的なユーザーにも多く受け入れられている360度カメラの代表作RICOH THETAシリーズは360度カメラの歴史が長いせいか、アプリの完成度がとても高く直感的な操作ができるという印象があります。ここで受け入れられるかどうかがこの製品の将来に大きく関わっていると思いますので、どんどん良くしていって貰いたいですね。