自然の景観や摩天楼をぐるりと撮影できる360度カメラ。VRコンテンツを撮影する方以外に、一般向けでも使いやすい機種が年々増えております。
その中で、特に注目したいのが「RICOH THETA」を開発したコアメンバーが立ち上げたスタートアップ「ベクノス」の360度カメラです。おすすめの360度カメラの中で、注目メーカーの1つと言えるでしょう。
そこで、今回は「ベクノス」が2020年10月に発売した「IQUI (イクイ)」の特長や実機レビューをしましたので、従来製品との違い等も踏まえて購入検討の参考にしていただければ幸いです。
もくじ
全天球カメラIQUIの特長
360度カメラには全天球カメラと半天球カメラの2種類ありますが、「IQUI」は4つのレンズを搭載した全天球カメラです。
そんな「IQUI」の主な特長を紹介します。
ペン型のスリムボディ
「IQUI」最大の特長とも言えるのがペン型のスリムボディです。
ボールペンと並んだ写真を見ても分かるように、見た目がほぼマジックペンのような形状です。
重さも約60gと非常に軽いので、ポーチやポケットに忍ばせやすいのも嬉しいポイントです。
360度カメラとしては非常に斬新なプロダクトデザインで、2020年度のグッドデザイン賞も受賞しています。
細かい設定不要のオート撮影に特化
カメラ本体には3つのボタン(「電源ボタン」「シャッターボタン」「静止画/動画の切替ボタン」)しかなく、シンプルな操作性であることも特長の1つです。
専用アプリで設定する項目も「シャッター音」「自動パワーオフ」「動画の転送」のオン/オフ切り替えしかありません。
スマホアプリで自動転送、SNSシェアも楽ちん
「IQUI」には専用アプリ「IQUISPIN(イクイスピン)」(App Store / Google Play)が必須です。撮影した写真や動画は、すべてアプリを通してスマホに自動転送される仕様です。
「IQUISPIN」ではリモート撮影の他に、静止画や動画のフィルター加工やテンプレート選択、各SNSシェアの機能が使えます。
なお、前述の通り「IQUI」はオート撮影に特化しておりますので、「RICOH THETA」のように露出補正やノイズ低減、インターバル撮影などは用意されておりません。
製品スペック一覧表
「IQUI」の製品スペックを一覧表にまとめました。
項目 | スペック詳細 |
---|---|
解像度 (スティッチング後) |
静止画:5760 x 2880 動画:2880 x 1440(30fps/約54Mbps) または一部のスマホに限り1920 x 960(30fps/約20Mbps) |
撮影距離 | 約40cm~∞(レンズ先端より) |
撮影モード | オート |
露出制御モード | プログラムAE |
ISO感度 (標準出力感度) |
オート(ISO100~1600) |
ホワイトバランスモード | オート |
シャッタースピード | 静止画:オート(1/16000秒~1/8秒) 動画:オート(1/16000秒~1/30秒) |
レンズF値 | F2.5 |
内蔵バッテリー | 720mAh(リチウムイオンバッテリー) |
マイク | モノラル |
内蔵メモリー | 14.4GB 静止画:JPEG 約1,500枚 動画:約30分(30秒動画×約60本) |
サイズ | レンズ部:直径19.7mm グリップ部:直径16mm 全長:139mm |
重さ | 約60g |
公式税込価格 | 32,780円 |
全天球カメラIQUIの実機レビュー
実際に「IQUI」を使ってみましたので、外観や使用感などのレビューを紹介します。
外箱はパステルカラーでかわいいデザインでした。
同梱するセット内容
「IQUI」に付属するセット内容は以下のとおりです。
- IQUI本体
- ソフトケース
- USB-A to USB-Cケーブル
- USBコネクター
- スタンド
4枚のレンズ構成
- 3枚の側面レンズ
- 上部レンズ
- 充電ポート
- 操作ボタン
「IQUI」の独自性とも言えるのが、本体上部にあるカメラ。
従来の全天球カメラ(THETA etc.)は正面と裏面の2レンズ構成が多いのですが、「IQUI」は側面に3つと丈夫に1つの合計4レンズ構成になっています。
操作ボタンは先に紹介したとおり、「電源ボタン」「シャッターボタン」「静止画/動画の切替ボタン」のシンプルな設計です。
解像度は5760×2880
上の写真は「IQUI」で実際に撮影したものですが静止画解像度は5760x2880pxと高い解像度です。これは4K動画を撮影できるRICOH THETA Vの静止画解像度(5376×2688)よりも高いスペックです。
プロダクトデザインや手軽な操作性という部分にフィーチャーされがちな全天球カメラですが、他社の中〜上位機種と比べても遜色のないレベルだと思います。
保存容量は約1,500枚
「IQUI」の内蔵メモリは14.4GBあります。
「THETA SC2」よりも内蔵メモリは0.4GB多いのですが、保存可能な写真枚数や動画撮影時間はTHETA SC2の半分となっていることに注意が必要です。
参考までに「IQUI」と「THETA SC2」の保存できる静止画枚数と動画撮影時間の目安をまとめました。
撮影方法 | IQUI | THETA SC2 |
---|---|---|
内蔵メモリ | 14.4GB | 14.0GB |
静止画 | 約1,500枚 (JPEG, 解像度 5760×2880) |
約3,000枚 (JPEG, 解像度 5376×2688) |
動画 | 約30分 (30秒/本×60本分, 解像度 2880×1440/30fps/約54Mbps) |
約32本(3分/本×11本分, 解像度 3840×1920/29.97fps/High:54Mbps,Low:32Mbps) |
RICOH THETA SC2の詳しいレビューはこちらで紹介しています。
RICOH THETA SC2実写レビュー。はじめての360度カメラにおすすめできるRICOH THETA最新モデル – Rentio PRESS[レンティオプレス]
充電はUSB-C
- 接続コネクタとUSB-Cケーブル
- 充電方法
「IQUI」は付属のUSBコネクターとUSB-A to USB-Cケーブルを使って充電します。
パソコンのUSB-Aポート、もしくはiPhoneの付属していた5W(5V/1A)の電源アダプタを使うと良いでしょう。
IQUISPINの設定方法
「IQUI」を使う前に、まずは専用アプリ「IQUISPIN」(App Store / Google Play)をインストールします。
インストールが完了したら、スマホの「Bluetooth」と「Wi-Fi」をオンにします。
アプリの手順に沿って、スマホに「IQUI」をかざし、ペアリング設定を行います。
接続できれば完了です。
「IQUISPIN」はアカウント登録をしなくても利用することができますが、登録するとクラウドストレージサービスの「IQUISPINアルバム」を使えるようになります。いわゆるGoogle Photoのようにクラウド上に保存できますので、スマホの容量を埋めることなく保管しておくことが可能になります。
また、「IQUI」のペアリングが完了すれば、アプリ内の「IQUI設定」ページで状態確認やシャッター音」「自動パワーオフ」「動画の転送」のオン/オフ切り替えもできるようになります。
「IQUI」からスマホへの動画アップロード時間は非常に長く、アップロード中は「IQUISPIN」でのリモート撮影や設定変更ができなくなります。連続で撮影するにはアップロードをキャンセルすることになりますので、はじめから「動画の転送」はオフのままにするのが適切です。
ペアリングモードについて
一度「IQUI」と接続すれば、次回からはIQUIの電源を入れて「IQUISPIN」を立ち上げるだけで、自動的に「Wi-Fi」接続画面が開くようになります。
ただし、実際には「IQUI」と繋がらないこともあり、ペアリングモードを使って再設定することも多くありました。
接続のスムーズさや精度はアプリのバージョンアップで改善できるポイントでもありますので、今後に期待したいところです。
ムービーの書き出し方法
「IQUISPIN」の「クリエイト」タブに「IQUI」で撮影した写真が並びますので、書き出したい写真を選択します。
次に右下の「フィルター」をタップし、Instagramのように好みのフィルターを設定してください。フィルターが必要なければ、中央下の「クリエイト」ボタンをタップして進めます。
2021年1月現在、15種類のフィルターから選ぶことができます。
「クリエイト」ボタンを押すと14種類のテンプレート(自撮り:4種類、ともだちと:6種類、みんなで:4種類)が表示されます。
各テンプレートの右上に視点移動のモーションのヒントが表示されているので、イメージするテンプレートを選択して実際の動きを確認してみましょう。
テンプレートを選択すると初期視点の調整とエフェクトの追加/選択の画面に移ります。
最後に右上の「完了」ボタンをタップすれば、「ビデオ書き出し中」となりますのでSNSにシェアするかクラウド(IQUISPINアルバム)へ保存してください。
- 初期視点の調整:写真右下の+ボタンをタップする。開始位置のアングルを調整できる。開始位置を変更することで、終わりのカットの調整も可能。
- エフェクトの追加/選択:25種類(2021年1月現在)のエフェクトから1つ追加することができる。(ハート、はなびら、バブル、花火 etc.)
期間限定テンプレートもあり
「IQUISPIN」では期間限定テンプレートが登場します。
今回は年末年始に関連するテンプレートを確認することができましたが、年間行事・企業コラボ等でも追加されることがありますので楽しみです。
IQUIで撮影した作例紹介
「IQUI」で撮影した写真を「IQUISPIN」で加工し、書き出してみました。
どんなムービーに仕上がるのか参考までに覧ください。
花と蝶
- 花木の中央で撮影
- フィルター:IQUI Magic
- テンプレート:Mustical Place
- エフェクト:Blue Morpho(青い蝶)
おもちゃの集会
- 平坦な場所にIQUIを囲むようにおもちゃを設置して撮影
- フィルター:Reflector
- テンプレート:heart-filled Time
- エフェクト:Confetti(紙吹雪)
朝の日光
- ビルに囲まれた通りで撮影
- フィルター:なし
- テンプレート:A Fun Holiday
- エフェクト:Soft Sparkles(やさしい光の玉)
撮影した動画
※スマホやタブレットで閲覧の方はこちらをタップして360度動画を確認してください。PCで閲覧の方は、マウスカーソルでグリグリ動かしたり、動画左上にある方向キーをクリックして動かしてください。
※スマホやタブレットで閲覧の方はこちらをタップして360度動画を確認してください。PCで閲覧の方は、マウスカーソルでグリグリ動かしたり、動画左上にある方向キーをクリックして動かしてください。
1本目は歩きながらの撮影、2本目は固定しながら撮影した動画です。
見て分かるように繋ぎ目が見えてしまい、動画としてのクオリティはイマイチでした。
ソフトウェアのアップデートに期待です。
THETA+との互換性もあり
「IQUI」で撮影した写真や動画は、RICOH THETAの編集アプリ「THETA+」(App Store / Google Play)とも互換性があります。
「IQUISPIN」よりもカスタマイズできる項目が多いので、スタンプやテキスト挿入、視点移動のカスタマイズなど細かく設定したい場合におすすめです。
実際に「THETA+」を使って、「IQUI」で撮影した静止画にアニメーションとテキストを挿入して書き出した動画がこちらです。
IQUIを使って分かった注意点
「IQUI」や専用アプリ「IQUISPIN」を使って撮影や編集を手軽に楽しむことができましたが、使い続けると不満に感じるポイントも分かってきました。
事前に注意点を把握することで使い勝手が幾分かは解消されると思いますので参考になれば幸いです。
バッテリー持ちが良くない
撮影に持ち歩いて最も気になったのが電池の持ちです。
「IQUI」を持ち歩いて断続的に2〜3時間(電源はオン)使いましたが、静止画撮影がメインでも残バッテリーがすぐ50%を切ってしまいました。
モバイルバッテリーを携帯しても直接USB-A to USB-Cケーブルを挿して充電できるわけではありませんので、以下のようなバッテリー節約術が必要だと思います。
- 「IQUISPIN」とのペアリングを切り、データの自動転送を止める
- 動画撮影をできるだけしない
専用バッテリーチャージャーケースがおすすめ
「IQUI」には別売りの持ち運びできる専用バッテリーチャージャーケースがあり、外出先でも本体を2回充電することができます。
結婚式やパーティー、旅行に「IQUI」を持参する方は、合わせて購入しておくことをおすすめします。
三脚穴がない
「IQUI」は付属のUSBコネクターとスタンドを使って固定撮影するのですが、三脚の固定撮影ほど安定感がありません。
テーブルなどフラットな面であれば問題ありませんが、少し凸凹した地面や草原で使うと不安定になります。
スマホへの転送時間が長い
「IQUISPIN」とペアリングすると、「IQUI」で撮影したデータはすべて自動転送されます。
動画の転送時間が非常に長いため、アプリ内の「IQUI設定」にある「動画の転送」は常にオフにしておくのが望ましいです。
動画を転送するなら、1本につき30分程度は放置しておくくらい時間に余裕があるときにしましょう。
撮影モードを誤設定しやすい
「IQUI」の撮影モード切替ボタンは、動画のように片側を押すだけでも静止画/動画の切り替えができてしまいます。
慣れるまで誤って動画撮影にしてしまったり、シャッターを押す際に他の指が触れて切り替えてしまったりということが何回かありました。
それからは「IQUISPIN」側でモードを確認してから撮影するようになりましたが、カメラ本体側もスイッチングのような動作のほうが使いやすいと感じました。
IQUIは手軽にショートムービーを作れる360度カメラ
「IQUI」の面白さは手軽にユニークなショートムービーを書き出せることだと思います。フィルター、テンプレート、エフェクト、すべてタップするだけで書き出しが完了します。
一方で「IQUISPIN」で動画の編集や確認ができなかったり、フィルターやテンプレート種類が限られていたりと、製品/サービスとしてはこれからといった印象です。
「IQUI」の魅力である携帯しやすいデザインをより活かすためにも、今後のソフトウェアアップデートやサービス拡充に期待です。
360度カメラはお試しレンタルがおすすめ
360度カメラやアクションカメラを使いこなせるか不安のまま購入することを悩ましく考えている方も少なくないと思います。特に旅行やパーティー会場など、撮影目的が限られている場合はなおさらでしょう。
そんな方にはお試しレンタルをおすすめします。
今回紹介したIQUI(イクイ)のレンタルをはじめ、家電レンタルサービスのRentio(レンティオ)では3泊4日〜からレンタルできる360度カメラ・アクションカメラを豊富に取り扱っています。
気に入った製品があればそのまま購入することもできますので、購入判断を決める材料として実際に使ってみてはいかがでしょうか?
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