写真をより美しく魅せる現代写真術!「RAW撮影・現像」のすすめ
更新日2018/09/15
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デジタル撮影が主流となった現代、写真を永久に劣化させることなく、きれいな状態でデータとしてパソコンなどの機器に保存することができます。
デジタルカメラで撮影された写真で最も有名な拡張子としてJPEGが挙げられます。GIFやPNGなど様々な画像系拡張子がある中で、JPEGは小容量で高画質を維持できる拡張子として写真のスタンダードとなりました。確かにJPEGでも一見きれいな写真を撮影することができます。
でも実はJPEGは既に大幅に劣化された写真であることはご存知でしょうか。今回私はデジタル一眼レフで撮影する際に記録できる「RAW」についてご紹介していきます。
もくじ
「RAW」とは?
JPEGは圧縮された変換後のデータ
「RAW」とはデジタルカメラで保存される形式の一つで、英語で「生」という意味を持ちます。名前の通り、撮影した色や光などのデータを無圧縮で記録された「生」の写真が「RAW」というものになります。
実はJPEGというのは、カメラ内で色調補正などの処理が行われた「変換後」の画像データになります。そのためRAWに比べると色情報などが失われ、圧縮された分、修正が効きにくいデータとなります。
一方で「RAW」は、撮影したままの情報がデータとして残るため、多少の失敗に対応でき、修正しやすいデータになります。写真は加工編集することが現代では一般的になっています。素材を活かして美しい作品に仕上げることこそ「美」という認識が広がっています。
「RAW現像」とは?
素材を仕上げる工程
「RAW」というのは、実は写真そのものではありません。写真として完成させるための素材という認識が適切でしょう。
「RAW」を使って写真にするためには露光量や色彩などの微調整をする加工編集が必要となります。このような作業を「RAW現像」と呼びます。
「RAW現像」では、細部まで微調整が可能で、撮って出しの状態では足りない部分を補ったり、見た目を華やかに仕上げることができます。
「RAW現像」には専用ソフトが必要
一般的なJPEG形式の画像を編集する場合は、特別なソフトウェアは必要なく、スマートフォンなどのアプリでも編集が可能ですが、RAW形式のファイルを編集する際は、RAW現像に対応した専用ソフトが必要となります。
RAW現像に対応したソフトウェアは一般的な画像編集ソフトと比べて非常に少なく、選択肢が限られます。その中で有名なソフトウェアをご紹介していきます。
Adobe Photoshop Lightroom Classic CC
「RAW現像対応ソフト」の代表的存在であるAdobe社が提供する「Photoshop Lightroomシリーズ」です。
実はカメラメーカー各社は無料ソフトとしてRAW現像に対応したソフトウェアを配信しています。しかし「Lightroom」と比較して限定された機能や操作性で差が目立ち、現状「Lightroom」がベストなRAW現像対応ソフトウェアとして認知されています。
多機能で優れた操作性
「Lightroom」は、メーカー純正のソフトウェアよりも多機能でありながら、視覚的にも分かりやすい操作性が魅力的です。調整は全てスライダー形式での操作が可能で、直感的に操作できます。初期状態からスライダーは右側にまとまっており、レイアウト的にも各項目が最適な位置に表示され、操作に慣れるのもとても簡単です。
驚愕の機能「かすみの除去」
私個人として一押しの機能は「かすみの除去」です。撮影地によって晴天でも遠くが靄などで霞んでしまう場合が多々あります。風景写真の場合、霞んだ写真は薄い印象の写真に仕上がり、美しくない作品に仕上がることもあります。そして輪郭や印象をはっきりさせるためにコントラストだけを無理やり上げる現像を行う方もいますが、シャドウ部が完全に潰れてしまい、黒つぶれの目立つくどい作品に仕上がります。
その悩みを解決したのがLightroom CC(2015年リリース)から搭載された機能である「かすみの除去」です。こちらの機能を使えば、これまでパッとしなかった被写体の輪郭や情景などを際立たせることができます。
先述の通り、風景写真には大変効果的で、飛行機写真をメインとする私には欠かせない機能となっています。例え天気が良い日だからといって、無調整の写真は眠い印象があります。+15~30くらいに設定することで視覚的にくっきりとした美しい作品へと姿を変えてくれます。
逆にマイナス側にスライダーを動かすことで、霞ませることも可能です。これは幻想的な場面を再現したいときに効果的で、ポートレートなどに効果的です。全体的にプラスに動かしたときよりもフワッとした印象に仕上げることができます。
この「かすみの除去」こそが純正ソフトウェアと比較した際の決定的違いだと私は感じています。
選べる料金プラン
「Abobe Photoshop Lightroom」は有料ソフトのため、料金を支払う必要があります。しかし、料金設定は良心的で月額サービスでの利用が可能です。
2017年11月現在、「フォトプラン」にのみ「Lightroom Classic CC」は入っています。注意すべきは「Lightroom CC」との違いです。「Lightroom CC」は、2017年に新登場した新たな現像ソフトです。写真の取り込みは完全にネットクラウドを通じて行い、オフラインでは作業できないソフトウェアです。私個人の感覚では、「Lightroom CC」は、まだ発展途上でマウスホイール操作の違いなど操作面でも不便を感じることがありました。
オススメは昔からのLightroomの仕様をベースにした「Lightroom Classic CC」です。フォトプランであれば月額980円(税抜)で、「Lightroom Classic CC」「Lightroom CC」「Photoshop CC」とストレージ容量20GBを使用することができます。月額1,980(税抜)のプランでは前述の3つのソフトと1TBのストレージ容量を使用することができます。
Adobe CCフォトプラン | プロ向け写真編集ソフトウェア
RAWの良いところ
RAW現像で特筆すべきメリットといえば「白飛び、黒つぶれの復元」と「ホワイトバランスの調整」の2つが有名です。
白飛び、黒つぶれを修正
RAW現像の場合、JPEGよりも画像内にデータを多く記録しているため、たとえ黒つぶれや白飛びをしていても、その中に色情報が残っていることが多々あります。そのため、調整次第ではシャドウやハイライトを調整することで正確な露出などに復元することも可能です。
ただ白飛びに関しては復元が難しい場合もあるため(オーバーな露出や光の反射などの復元は困難)RAWを使った撮影はあえてアンダー気味(暗めの露出)で撮影するようにしています。暗めの画像の方が色情報は残りやすく、写真として救いがあるのです。
ホワイトバランスを無劣化で調整可能
もう一つの「ホワイトバランスの調整」は、撮影時に間違えたホワイトバランスを設定した際や、思ったイメージと違った場合に調整して理想の色へと近づけることができます。
JPEGの場合は、ホワイトバランスの調整は写真に悪影響を及ぼす編集となります。JPEGは圧縮後のデータであり、色情報が少ないため、無理やり色を直した様な仕上がりになります。ホワイトバランスは色温度といって、色彩が大幅に変わるため、色彩調整の難しいJPEGには向いていません。
しかしRAWの場合は、仕組み的に未確定の色情報で残しているため(カメラ内でホワイトバランスを調整した通りの色が仮に反映されていると考えることが良いでしょう)撮影後も劣化させることなく、自由にホワイトバランスを調整することができます。ホワイトバランスは色合いの調整には欠かせない機能で、夕暮れ時にオレンジ色に染まりすぎている場合、数値を落として対応するなど、とても頻繁に使用する設定項目です。
Lightroomの場合はケルビン値で視覚的な調整が可能なため、理想の色の出方を再現することができます。
RAWのデメリット
大きなファイルサイズ
これはRAWで撮影することのデメリットから始まりますが、無圧縮なデータのため、とにかくファイルサイズが大きいです。JPEGの3~5倍のファイルサイズは想定しておくと良いでしょう。
撮影時の弊害として連続撮影回数が大幅に減ることです。データサイズが大きくなるとともにメモリーカードへの書き込みにも時間がかかります。
また今まで使用していたメモリーカードでの保存可能枚数も大幅に減ることとなります。とはいえ、現代ではSDカードが非常に安価になり、手に入りやすくなったため、メモリーカード自体の問題は少ないでしょう。
ネットクラウドの有効活用
PCへの保存は私も大きな問題として抱えています。海外へ撮影に行った場合、64GB×2と32GB×1を全て使い切ってしまう私にとってデータ容量の問題は永遠に尽きません。しかし現代ではネットクラウドサービスが充実してきており、ネット上に撮影したデータを保存できる時代でもあります。
ネットクラウドは月額制サービスが多いですが、頻繁に使用する場合や枚数が多い場合は外付HDDを増設し続けるよりコスト面でも抑えられるメリットがあります。またネットクラウドは物理的破損(外付HDDなどは落下や静電気でデータ消滅の可能性があります)の心配がないため、安心して預けることができます。
以上のサービスなどを駆使して容量の問題を解決することができれば、RAW撮影を選ばない手はないでしょう。
「amazonプライムフォト」がオススメ!
様々なネットクラウドが存在する現代ですが、RAWを保存するのにオススメなサービスは「amazonプライムフォト」です。
「amazonプライムフォト」では、容量無制限で写真の解像度や品質を落とすことなくRAWデータを保存することができます。似たようなサービスに「Googleフォト」がありますが、こちらは容量無制限で使うためには「JPEGのみで品質が落とされる」ことが条件になっています。
「amazonプライムフォト」は、RAW形式も保存できて容量無制限なため、圧倒的なサービスです。
Amazon.co.jp: : Prime Photos Home
RAW現像とJPEG現像の作例
先述の通りRAWとJPEGの違いは「黒つぶれ、白飛び耐性」「ホワイトバランス調整」の2つがメインになります。
実際文字では伝わりにくいと思うので、実際に現像してみて仕上がりを比較してみようと思います。差が出やすいように「明暗差が大きい」「ホワイトバランスが調整する」という条件で現像を進めていきます。
RAW現像の場合
ハイライトを抑えて白く飛んでいた空を復元しました。
シャドウを上げて暗い部分を出すことで全体的に落ち着いた写真になりました。ホワイトバランスはケルビン値を高くし、セピア調のようなイメージに仕上げました。
JPEG現像の場合
RAW現像と全く同じ設定で現像作業を行いましたが、大きな変化として色の違いがあります。
RAWではケルビン値を上げる事で自然な発色でセピア調の写真に仕上がりましたが、JPEGではオレンジというよりも黄色に変化してしまい、色に深みを感じられない状態です。
そして画像を拡大してみるとJPEGのシャドウ部の弱さがよく分かります。暗部に色情報が少ないJPEGは、シャドウ部のディティールが崩れ、まるでピンボケ写真のようになっています。元々黒つぶれしていた部分なので細かいディティール情報が入っていないことがRAWとの違いとして出ています。
RAW撮影と現像こそ写真の完成品
これまでRAWについてご紹介してきましたが、RAWで撮影しないということはとてももったいないことです。
将来も使える写真になる
例え「私は現像なんかしない」と決めている人でも、RAWで撮影するメリットは十分にあります。仮に10年後、20年後に今日撮影した写真を使う機会があるときRAWで撮影していれば、使うときに自分好みの仕上がりにすぐ出来るからです。
人間なのでベースはあっても細かい好みは変わることがあります。JPEGで当時好みの写真に仕上げても、10年後好みが変わった自分が見返したときに修正が効かないため、一生その写真は使われないことになるかもしれません。RAWで撮影することで鮮度は永久に保たれ、いつでも「今の自分の好み」に仕上げることができます。
作品として仕上げるための工程
これは私の個人的な考えですが、RAWで撮影して現像した作品こそ写真として成り立つのではと考えています。良いと思ったものは積極的に取り入れていきたいというのが私のスタンスですが、RAW現像もその一つです。
昔は「無トリミング、無加工で撮って出しこそ写真の技術!」と考えていた私ですが、今ではすっかりRAW現像で美しく仕上げる魅力に憑りつかれています。現像作業では、どうしても自分の理想に近づかないと首をかしげることもありますが、撮影時に成功した喜びと現像時で成功した喜びは似ているところがあります。良く言えば撮影時と現像時で2回喜びを感じることができるのです。
今後どのような写真表現の時代になるかは予想できませんが、昔から自分が表現したいことを伝える表現芸術というのは昔から変わりません。そして今ベストな表現方法としてRAW現像を私はオススメしています。
RAW現像はあなたの作品を更に魅力的に仕上げることでしょう。