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主にカメラレンズやカメラ関連アクセサリーの開発・販売を行う「ケンコー・トキナー」。
Rentio PRESSでは、これまでケンコー・トキナーが開発するカメラレンズのレビューを中心に記事においても展開を進めてきましたが、今回ケンコー・トキナーチーフデモンストレーターである田原栄一さんに直接ケンコー・トキナーにおける魅力を語って頂きました。
ケンコー・トキナーが展開するブランド「Tokinaレンズ」の長い歴史をはじめ、現行モデルとして販売されている製品、今後の展望などを存分にご紹介していきます。
もくじ
ケンコー・トキナーの紹介
田原さんにお話を伺う前に「ケンコー・トキナー」の概要についてご紹介していきます。
ケンコー・トキナーは、冒頭でもご紹介した通り、カメラレンズをはじめ、三脚やストロボ、フィルターなどのカメラ関連アクセサリーも販売するメーカーです。
前身企業となる株式会社トキナーの設立は1950年と長い歴史を誇り、2020年には創業70年を迎え、カメラ関連のメーカーとして老舗メーカーです。
カメラレンズ「Tokina」としては広角や標準系のレンズを中心にレンズラインナップを展開しており、ここ数年で流行を見せている高級路線を意識した「operaシリーズ」や「FíRINシリーズ」も登場し、一眼カメラ市場においても存在感を見せています。
また、SLIKブランドによる三脚製品や質の高さから多くのユーザーから支持を得ているKenkoフィルターなどのアクセサリーも古くから愛される要因の一つです。
ケンコー・トキナー チーフデモンストレーター 田原栄一さん
今回取材に応じて頂いたのは、ケンコー・トキナーにてチーフデモンストレーターとしてご活躍されている田原栄一さんです。
田原さんは1994年スリック株式会社入社、2001年株式会社ケンコー(後のケンコー・トキナー)に転籍、以来数々のカメラショーにてカメラおよびカメラ用品に関するセミナーを展開されてきました。
近年では、YouTubeにおけるオンライン上でのカメラ講座などの活動も行われており、ケンコー・トキナーの顔としてご活躍されています。
YouTubeチャンネル「チーフデモンストレーター田原栄一」はこちら
来る2020年、70周年を迎えるケンコー・トキナーの歴史
─ この記事では、まだトキナーのことを知らない方もご覧になると思われます。まずは簡単な概要や歴史の紹介をお願いします
田原 : トキナー自体は来年2020年に70周年を迎えるという会社で、創業当初は「トキナー」という名前ではなく、「東京光器製作所」という名前で元々はトキナーという名前は存在しませんでした。
これは色々と諸説があるのですが、トキナーというブランド名は、ドイツで開催されている有名なカメラショーである「フォトキナ」にいつか出せるようなブランドにしたいという想いから「フォトキナ」の名前から「トキナー」という名前が付けられたとされています。
レンズの歴史としては、元々シグマさんやタムロンさんを含めたサードパーティーメーカーはマウント交換式(マウント部分が交換できるタイプで使用するカメラに応じてマウントを交換する形式)を採用していましたが、トキナーに関しては比較的早い段階で現在一般的となっている各カメラマウントに合わせた固定式マウントの形式へと変更しました。
そして、トキナーでは、1981年にレンズラインナップにおいて高級タイプと通常タイプに分けようと考え、高級タイプはAT-X(ADVANCED TECHNOLOGY-X)、通常タイプがSZ-X(STANDERD ZOOM-X)という2つのシリーズが誕生しました。
両シリーズの名前の最後に付く、「X」の文字はローマ数字でそれぞれのシリーズにおいて技術的に優れた10本のレンズを開発しようと計画されました。
トキナーの歴史において純正レンズを凌ぐ画期的であったレンズ群
─ 歴史あるトキナーブランドの中でも注目を浴びたレンズを教えてください
田原 : トキナーの歴史において紹介したい2つの製品があります。
1つ目は、AT-X 828 (80-200mm F2.8)です。
よく巷では80-200mm(今でいうところの70-200mm) F2.8通し望遠ズームレンズの元祖はトキナーだと言われていますが、実は元祖はトキナーではないのです。
AT-X 828が発売される少し前の1982年にニコンがニッコール80-200F2.8を発売しており、現代におけるF2.8通しによる望遠レンズの元祖は実はニッコールなのです。
しかし、ニッコール80-200mmF2.8は、価格が42万円で重さも1900gと重くて大きく、非常に高価なレンズでした。
ところが1984年にトキナーがAT-X 828を発売した際のスペックは、重さはニッコールレンズの約半分の1080gで、価格も12万円と低価格を実現しました。この画期的な開発による印象こそトキナーのAT-X 828がF2.8望遠レンズの元祖と呼ばれる由来でもあるのです。
もう一つはAT-X 270AF(28-70mm F2.8)です。
こちらも先ほどのAT-X 828同様に、発売の前となる1988年にニコンがニッコール35-70F2.8を発売し、標準系のレンズとして新聞記者など報道カメラマンを中心に使用される存在でした。しかし、ニッコール35-70F2.8は、広角側の焦点距離が35mmスタートで、ズームは直進タイプが採用されていました。
ニッコール35-70F2.8発売の1年後となる1989年にトキナーがこちらのAT-X 270AFを発売し、焦点距離28mmから70mmの幅を実現しました。今でこそ標準ズームは24mm始まりの製品が多いですが、当時標準ズームレンズとしてここまでの広角域を実現したのはトキナーが初めてでした。更に回転ズーム式も採用され、ニコンを超える焦点レンジと併せた大きな魅力として当時大きな話題を呼びました。
1994年から、AT-X 270 AF PROとなり「トキナーといえば大口径標準ズーム」と言われるようになりました。さらに1995年にはAT-X 828 AFが「AT-X 828 AF PRO」に進化、回転ズームを採用したことからこれも人気モデルとなり、これら2製品がトキナーの躍進を大きく支えた画期的なレンズです。
─ 長い歴史の中でデジタルカメラへの転換期があったかと思います。その辺りの製品展開としてはどのような戦略があったのでしょうか
田原 : まさに2000年代に入るとデジタルカメラの時代が到来しますが、2004年に発売されたAT-X 124 PRO DX(12-24mm F4)は、トキナーの歴史から見て画期的なレンズでした。
ワイド系レンズには、非球面レンズが必ず採用されていて、その中にはガラスモールド非球面レンズと複合非球面レンズ、さらにカメラメーカーの上位レンズには高価な「切削非球面レンズ」が採用されていました。トキナーはコストダウンと非球面量の確保から、全く新しいプラスチックモールド非球面レンズ(P-MO)を開発し、搭載することに成功しました。その結果、ニコンの12-24mmF4と同スペックながら、ほぼ半分の値段で販売することに成功しました。
この技術が今のトキナーレンズにおいても活きており、トキナーが広角系のレンズを得意とする要因の一つでもあるのです。
トキナーレンズにおける構造のこだわりについて
─ トキナーレンズにおいて特にこだわっている部分を教えてください
田原 : トキナーが昔からこだわりを持つ構造として、「ワンタッチフォーカス機構」があります。
レンズのフォーカスリングを前後に移動させることで、オートフォーカスとマニュアルフォーカスの切換を気軽に行うことができる機構です。
この機構のもととなる「フォーカスフリー機構」を採用したのは、先ほどご紹介したAT-X 270 AFの2世代目のモデルとなる「AT-X 270 AF PRO」です。
当時はAF駆動やニコンにおいてオートフォーカスがカメラ内のモーターで駆動することもあり、レンズ側のAF/MF切換だけでなく、カメラ側においても切り換える必要があったため、今実装されている機構とは少し異なるものですが、ワンタッチフォーカス機構の元祖となりました。
2000年発売の「AT-X 280 AF PRO」よりワンタッチフォーカス機構が完全に実装採用され、それ以降のほぼ全てのレンズにおいてワンタッチフォーカス機構が採用されています。
トキナーレンズシリーズ現行ラインナップ
現在AT-Xシリーズ、atx-iシリーズ、atx-mシリーズ、FíRINシリーズ、operaシリーズにおいて10種類のレンズが販売されていますが、これらのレンズは伝統的な系統として古くから受け継がれてきたレンズが大半です。
AT-Xシリーズ
- AT-X 14-20 F2 PRO DX
- AT-X 17-35 F4 PRO FX
- AT-X 116 PRO DX II
- AT-X 11-20 PRO DX
- AT-X 107 DX Fisheye
atx-iシリーズ
- atx-i 11-16mm F2.8 CF
- atx-i 100mm F2.8 FF MACRO
atx-mシリーズ
- atx-m 85mm F1.8 FE
FíRINシリーズ
- FíRIN 20mm F2 FE AF
- FíRIN 20mm F2 FE MF
- FíRIN 100mm F2.8 FE MACRO
operaシリーズ
- opera 16-28mm F2.8 FF
- opera 50mm F1.4 FF
※2020年4月末更新
この現行ラインナップを見て行く上で、デジタルカメラ時代の先駆けから今まで、田原さんにレンズラインナップの変貌を語って頂きました。
メーカーが考えるラインナップの狙い
─ 現行のラインナップの特徴について解説をお願いできますでしょうか
田原 : 昔からトキナーでは、広角レンズや標準系のレンズに力を入れていこうという方針で進め、途中望遠や高倍率などのレンズについても開発を行ってきましたが、あくまでメインの軸はブレることなく、広角や標準系のレンズを中心に開発を行ってきました。
デジタル時代になる前は、サードパーティーのレンズメーカーは、カメラメーカーが発売する新製品に合わせたダブルズームを開発することが多く、互換性を持たせたこれらのレンズとカメラボディを販売店が組み合わせて純正レンズを購入するよりも安く済むという狙いが一般的でした。
ところが、デジタルカメラ時代の到来によって標準ズーム系のレンズまでもカメラメーカーが抱え込むような形となり、純正メーカーによるレンズキットが一気に普及する形となりました。
そこでトキナーは、純正レンズで揃えることのできる広角ズームや望遠ズームと被らず、ユーザーがステップアップする際に選ぶことの多いであろう、現行ラインナップで存在する広角系やマクロレンズといったジャンルを展開するようになりました。
─ 直近ではoperaシリーズやFíRINシリーズにおいて単焦点レンズのラインナップも目立っている印象です
田原 : おっしゃる通り、operaシリーズにおいて「opera 50mm F1.4 FF」も発売され、単焦点というこれまでとは違ったスタイルでのレンズも発売されました。
元々トキナーでは、28-70mmなどのイメージが強く、これらのレンズを使用していたユーザーにおいて一定の層にてポートレート撮影の需要もあったため、近年世間で注目を浴びている「単焦点レンズ」というトレンドでボケ味を感じられるポートレート撮影を行うユーザーをカバーする意味でも開発されています。
そのため、全く新しい概念というよりも、こちらもこれまでのレンズ展開に沿った新製品開発となっています。
高級路線のopera、FíRINシリーズ誕生秘話
─ 今高級路線として販売されているoperaやFíRINシリーズの誕生秘話はありますでしょうか
田原 : 実はトキナーレンズでは、映画用のシネマレンズの開発も行っています。
当初はCINEMA AT-Xという名前でスタートさせ、今では「Tokina Vista」というシリーズ名でラインナップが存在します。
世間がどちらかというと動画撮影の方向、そして単焦点レンズを好む傾向に進んでいる中で、シネマレンズで培ったノウハウや動画志向を取り入れたレンズとして、これらのレンズシリーズがスタートしました。
Tokina Vistaで培ったノウハウが活かされていることは間違いないのですが、実際にTokina Vistaで販売されている50mmの単焦点レンズと、operaで販売されている50mmの単焦点レンズは、中身が全く異なるものになります。
─ FíRINはこれまでのAT-Xとは違った全く新しいシリーズなのでしょうか
田原 : FiRINは我々が得意とする、大口径広角レンズとしてスタートしました。
FíRINシリーズにおいてもソニーさんのフルサイズ対応のEマウントレンズを開発するにあたって、ソニーさんのラインナップでどこが今薄い部分だろうか、あとは我々が得意とする広角系のレンズで勝負したいという想いと、今の流れが単焦点レンズであるということもあり、FíRINシリーズでは現状このようなラインナップを採用しています。
─ 今後再び望遠レンズの開発を行う可能性はあるのでしょうか
田原 : 現状はFíRINシリーズから発売されている「100mm F2.8 FE MACRO」が望遠の限度として考えています。
というのもカメラメーカーがレンズキットとして販売するダブルズームにおける望遠レンズで大半の撮影をカバーできてしまうことが1つの要因として考えており、150-600mmのような突出した望遠レンズ製品を開発しない限り、難しい分野であると考えています。
そして焦点距離が拡大するほど、レンズ本体の大きさや重量が増加し、持ち運びに関しても気軽さがなくなってしまいます。
一方で広角レンズであれば極端に大型化することはないので、持ち運びが楽というメリットがあります。
私たちのスタンスとしては、最初に購入したレンズに対して、買い足せるもので好きな撮影ジャンルにおいて価値のあるものを提供していくというものです。
伝統のAT-Xシリーズの今後の展望
─ AT-XシリーズよりAT-X 16-28 F2.8 PRO FXからopera 16-28mm F2.8 FFへと更新されましたが、今後AT-Xシリーズに関してはoperaにおいて後継モデルが開発されるのでしょうか
田原 : AT-Xシリーズに関しては今後も消滅することはなく、色々な製品開発を行っていくことを模索しています。
AT-Xシリーズはoperaシリーズとは別の存在として、今回は16-28mmのレンズにおいてoperaシリーズにて後継が開発されただけであって、今後他のレンズの後継モデルにおいて必ずしもその流れになるわけではないです。
他レンズメーカーへの意識について
─ 同じくサードパーティー製レンズを開発するシグマさんやタムロンさんがいらっしゃると思いますが、今後トキナーレンズにおいて他メーカーとの真っ向勝負になるのか、それとも被らないようなレンズを開発していくのか気になるところです。
田原 : やはり同じレンズのジャンルにおいて他社さんと競合してもなかなか難しい部分があります。なので、私たちの強みであるワイド角における強みを中心に、標準レンズの開発も行いつつ、他のメーカーさんには存在しないようなレンズを開発していきたいという感覚があります。
感覚としてですが、タムロンさんに関しては私たちの特性とは少し離れている印象です。
最近こそ単焦点レンズなどの開発も行われていますが、元々は高倍率ズームレンズを強みとして開発されていたイメージです。逆に私たちは過去の歴史において高倍率ズームレンズの開発をどうも苦手としており、タムロンさんが得意なところと、私たちが得意なところは大きく異なっているという認識です。
シグマさんに関しては、最近私どものoperaシリーズとだいぶ傾向が似ていると感じるところです。
特にシグマさんが開発する「Art」シリーズにおいて、operaシリーズとターゲットとするユーザー層が少し被るような印象ではありますが、シグマさんのやり方というのも勉強させて頂きつつ、私たちにおいてもトキナーらしいレンズ開発を行っていきたいと考えています。
メーカーがおすすめするトキナーレンズの活用方法
─ 最後にこれからレンズを新たに購入したいと考えているユーザーさんに向けて、トキナーレンズのおすすめポイントを教えてください
田原 : やはりトキナーレンズはワイドの画角に強いということから「風景」や「星景」など、広角レンズが活きる撮影を好まれる方におすすめしたいところです。
特に星空を写す「星景写真」においてトキナーでは、レンズ単体ももちろんですが、ソフトフィルターや光害カットフィルターなどの「フィルター類」や、赤道儀、星景撮影には欠かせない三脚など、必要な機材全てを揃えることができるメーカーです。
一方で最近展開を始めたoperaシリーズの50mm F1.4 FFなどのレンズになってくると、ポートレート撮影などでも活躍するカメラとしておすすめです。
こちらも関連するアクセサリー類として、今ポートレート撮影において流行しているブラックミストフィルターや、自動バウンスコントロールができる、新世代フラッシュなど、ポートレート撮影に特化したアクセサリー類をまとめて揃えることもできる大きなメリットとしておすすめしています。
どの撮影ジャンルにおいても全てトータルで考えることができることが私たちの強みであると考えています。
ケンコー・トキナー特別インタビューを終えて
Rentio PRESSとして初の試みとなったメーカー特別インタビュー。
これまで私自身は様々なカメラやレンズを実際に使ってレビュー記事として展開を行ってきましたが、メーカーさん側の話を直接伺うと、製品に対してもまた違った印象を見受けられることもあります。
トキナーレンズに関しては最近注目を浴びる「operaシリーズ」を中心に私自身も使用したこともあり、とても今後が気になるメーカーでした。
今回お話を伺った田原さんは「詳しいことはまだお話できませんが、今後色々なレンズ製品の発表があると思うので、期待していてください」とのコメントも頂いたため、トキナーレンズによるラインナップ拡充は今後も進むことが期待できます。
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トキナーレンズはレンタルで体感
今回ケンコー・トキナー田原栄一さんへの特別インタビューということで、トキナーレンズの魅力を語って頂きました。
レンズというのはこれまで購入して使用する以外に方法がありませんでした。しかし、現代ではカメラ機材のレンタルサービスが流行となっており、「Rentio(レンティオ)」にて多くのトキナーレンズをお試しで使用することができます。
ぜひトキナーレンズを使ったことがないという方にも気軽に体感できる方法としてカメラレンタルがおすすめです。
また、Rentioではレンタル後に気に入ったレンズをそのまま自分のモノにできるレンタル後購入のサービスも行っています。賢くお得にレンズ選びを行う上で最適なサービスとしてぜひご活用ください。
(※取材協力/株式会社ケンコー・トキナー)