HTC VIVE Focus 3を使用レビュー!初心者がハイエンドなオールインワンVRゴーグルを使いこなせるのか検証してみた
更新日2023/03/30
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筆者が初めてVRデバイスを手にとったのは2016年。ダンボール製の折りたたみVRゴーグル「ハコスコ」です。
当時は「RICOH THETA」の流行もあり、ハコスコアプリやYoutubeにアップロードされた360度映像を楽しでいたのですが、映像鑑賞以外の用途がなかったので短いブームで終わってしまいました。
それから現在(2022年)に至るまでの6年間、VRの世界に全く触れてこなかった筆者ですが、最近になって「メタバース」という言葉をよく耳にするようになり、VRへの興味が再燃してきました。
どうせなら一番ハイスペックなものを使ってみたかったので、HTCの「VIVE Focus 3」を実際に使ってみることにしました。
「HTC VIVE Focus 3」を通して、2022年のVRにはどんな世界が広がっているのか、VR初心者の目線で共有します。
もくじ
HTC VIVE Focus 3の特長
「VIVE Focus 3」は2021年6月末に日本国内で発売された、HTCのオールインワンVRヘッドセットシリーズの上位モデルです。スタンドアロンVRデバイスなので、PCやスマホなどの外部機器に接続せずとも使えます。
HTCはビジネス向けVRプラットフォーム「VIVE Business」も展開しているので、実用性のあるVRデバイスを検討している法人向けのオールインワンVRヘッドセットでもあります。
「VIVE Focus 3」がスペックが非常に高い分、他社製品と比べると販売価格も高いです。個人用途としてゲームや映像等のエンタメコンテンツも十二分に楽しめますが、用途に対してオーバースペックではないか吟味が必要な製品でしょう。
- 完全ワイヤレスで独立利用ができるスタンドアロンVRヘッドセット
- 5K相当の高解像度(両眼合計)
- 自然に近づけた120度の視野角と滑らかな90Hzのリフレッシュレート
- 没入型3D空間オーディオと音漏れを低減した指向性スピーカー設計
- ヘッドセットの着脱がとても簡単
- 最大2時間の連続使用が可能&わずか30分で最大50%までスピード充電
- コントローラー不要の高精度なハンドトラッキングを搭載
ライトに楽しむならMeta Quest 2
エンタメコンテンツを楽しむだけなら、「Meta Quest 2」で十分かもしれません。
「VIVE Focus 3」と比べると全体的にスペックは落ちますが、Soc(プロセッサー)は同じ「Qualcomm® Snapdragon™ XR2」を搭載していますし、コンパクトなサイズ感からも使い勝手が良いと思います。
なによりも約10万円の価格差がありますので、ライトにVRコンテンツを楽しむなら「Meta Quest 2」のほうが良いかもしれません。
Meta Quest 2(Oculus Quest 2)については、レンティオのスタッフがレビューしていますので、気になる方はこちらを参考にしてください。
「Oculus Quest 2」の実機レビュー!旧型の「Oculus Quest」と比較して分かった改善点と違い – Rentio PRESS[レンティオプレス]
製品スペック一覧表
項目 | スペック詳細 |
---|---|
スクリーン | デュアル2.88インチLCDパネル |
解像度 | 合計5K/4896×2448ピクセル (片眼:2448×2448ピクセル) |
リフレッシュレート | 90Hz |
視野角(FOV) | 最大120度 |
IPD調整 | 57mm〜72mmの範囲で無段階調整 |
プロセッサー(SoC) | Qualcomm® Snapdragon™ XR2 |
メモリ(RAM) | 8GB |
ストレージ(ROM) | 128GB ※外部ストレージ:最大2TBのmicroSDをサポート |
Wi-Fi | Wi-Fi 6(IEEE802.11a/b/g/n/ac/ax) ※2.4/5GHzどちらも可 |
Bluetooth | 5.2+BLE |
オーディオ | 指向性スピーカー×2 |
内蔵マイク | 搭載 エコーキャンセル用デュアルマイク |
インターフェース | (ゴーグル) ・電源ボタン ・ヘッドセットボタン ・3.5mmオーディオジャック(Hi-Res認証済み) ・USB Type-C 3.2 Gen-1 ×2 (コントローラー) ・エルゴノミックグリップボタン ・アナログトリガーボタン ・AB / XYボタン ・システム / メニューボタン ・ジョイスティック |
バッテリー | (ゴーグル) 外付け26.6Whバッテリー (コントローラー) 最大15時間相当の連続使用ができる内蔵バッテリー |
使用時の姿勢 | 立位 / 座位どちらもサポート |
プレイエリア | 推奨:最大10m×10m 最小:1.5m×1.5m(立位) |
サイズ※実測 (幅×奥行き×高さ) |
(ゴーグル) 約205mm×295〜36.5mm×10.5mm (コントローラー) 約100mm×120mm×160mm |
重さ※実測 | (ゴーグル) ≈ (コントローラー) 145g(ストラップ含む)/個 |
公式税込価格 (2022年5月30日現在) |
130,900円 |
HTC VIVE Focus 3の実機レビュー
それでは「VIVE Focus 3」の実機を手にとって、色々と確認していきたいと思います。
特に装着感や使いやすさにフォーカスしてレビューしてみます。
セット内容
届いたパッケージを見て想像以上の大きさに驚いたのですが、同梱物はご覧のとおりです。
コントローラー充電用の二股ケーブルには充電器が付属しないので、USB Type-Cのパソコン入出力ポートもしくは電源アダプタが必要な方は別途用意しておきましょう。
ちなみにゴーグル側面のUSBポートにコントローラー充電用のUSB-Cケーブルを接続すれば、同時充電が可能になります。
- VIVE Focus 3 ヘッドセット(ゴーグル)
- コントローラー×2(左右)
- コントローラーのストラップ
- ACアダプター(ゴーグルバッテリー充電用)
- USB Type-Cの二股ケーブル(コントローラー充電用)
- レンズクリーナー※
- クイックスタートガイド etc.
高い質感と充実のインターフェース
「VIVE Focus 3」はハイエンドのVRヘッドセットだけあって、高級感のある外観デザインです。
ボディ素材にはマグネシウム合金シャーシが採用されており、堅牢な作りでありながら軽量に設計されているのも長所です。
正面右側には視線モードでメニュー選択したり電源オフ等ができるヘッドセットボタン、正面左側には3.5mmオーディオジャックとPC接続用のUSB Type-Cポートがあります。
フレームの両サイドにはそれぞれ2基のドライバースピーカーが内蔵されており、耳を開放したまま没入感のあるオーディオを楽しめます。
ちなみに、スピーカーは指向性がありますので音漏れを低減してくれます。
正面向かって下側には焦点合わせのIPDダイヤルと音量ボタン、フタを開けるとアクセサリ専用のUSB Type-Cポートが備わっています。
後ろ側には充電ポート・電源ボタン・バッテリー残量を表示するLED・調節ダイヤルがあります。
ヘッドセットには必要十分なインターフェースが備わっており、それぞれ直感的に使えるものばかりなので取り扱いは難しくありません。
フェイスクッションを外すと、裏側正面向かって左側にmicroSDカードスロットがあります。
最大2TBまでサポートしているので、内蔵ストレージの128GBでたりない分を補いましょう。
前後のバランスが取れた心地よい装着感
「VIVE Focus 3」のゴーグルは前後のバランスが良く、安定かつ自然な装着感に心地よさを覚えました。
重さは約785g(実測値)ほどありますが、そこまで重さも感じません。
ゴーグルの重心と体の重心にズレがないので変に力むことがなく、長時間の装着でも疲れにくいように思います。
後面下側にはクイックリリースボタンがありますので、調整ダイヤルを回さなくてもクイックリリースボタンを押すだけで一気に広げられるので取り外しも簡単です。
眼鏡つけたままでも装着できる広々したサイズ感
「VIVE Focus 3」は眼鏡をかけたままでもOKです。
メガネフレームとヘッドセットのフレームが干渉することもないので、長時間装着していても快適でした。
視力が悪いとIPDダイヤルの焦点合わせもはっきりしないので、コンタクトレンズを使わない方でも気楽に楽しめるのは嬉しいポイントです。
ヘッドセットは写真のようにサイズ調整できるので、頭の大きさ・眼鏡の有無に関わらず使いやすいので、みんなにやさしいデザインのVRデバイスです。
視野角は120度
「VIVE Focus 3」の視野角は120度と広いので、ダイナミックな映像を体験できます。
ただ実際に使ってみると分かるのですが、フェイスクッションが視野に入ってくるので思ったよりも視野は狭く感じました。(上写真はイメージ)
遠くのモノ見るように商店をずらすと気にならなくなりますし、今のままでも十分楽しめるですが、VRゴーグルの視野角は今後広がっていくと思われますので期待したいです。
6DoFサポートも兼ねるコントローラーのグリップ感も良き
NINTENDO64(通称ロクヨン)世代である筆者にとって、「VIVE Focus 3」のコントローラーは驚くほど手に馴染みました。
重さも1個あたり約145g(ストラップ含む)ほどしかないので、手首や二の腕に負担がかかることもありません。
平行にして持った時のバランスも良いので、変に力むことなく使えるのも高い評価ポイントでした。
コントローラーには入力ボタンがたくさんありますが、ボタンは指が届く丁度いい距離感に配置されているので快適です。
最初はボタンの役割を覚えるのが大変かもしれませんが、説明書を見ないでポチポチ遊んでいればすぐに理解できるほど直感的です。
交換可能なバッテリーパック
「VIVE Focus 3」のバッテリーは着脱できるモジュール設計なので、予備バッテリーを用意しておけば交換してすぐ使えます。
予備バッテリーがなくても約30分で最大50%までスピード充電ができるので、あまり感覚をあけることなく使用できるのがメリットです。
なお、バッテリー容量は最大2時間の連続使用相当あります。
HTC VIVE Focus 3を使ってみた感想
「VIVE Focus 3」を使って感じた良かった点やイマイチに感じた点を紹介します。
ビジネス用途に設計された「VIVE Focus 3」のスペック・性能面の高さは体感できたものの、筆者のようなVR初心者にはミスマッチなVRデバイスであることも分かりました。
個人利用でハイスペックなVRヘッドセットを探していた方らいくらかは参考になるかもしれません。
○ 5K映像の没入感がすごかった
合計5K相当の解像度はすごかったです。
正直なところ解像度が高くても画質はそこまで期待していなかったんですが、良い意味で期待を裏切ってくれました。(解像度と画質の関係はここでは詳しく言いませんが、高解像度だからといって必ずしも高画質になるわけではないんです。)
耳元で包まれるような空間オーディオとの組み合わせで、非常に没入感のあるエンタメ体験ができました。
リフレッシュレートも90Hzで特別気になるようなカクつきもなく、レスポンスも良いので楽しかったです。
残念ながら録画した映像は720pになってしまったのでYoutube動画からは伝わりにくいかも知れません。ぜひ一度体験してみてほしいです。
○ ワイヤレスだからこその開放的なVR体験
「VIVE Focus 3」はワイヤレスで使えるので、Wi-Fi接続さえできていれば使用場所の制限を受けません。
電源ケーブルが必要ないため、コンセントがない場所、ケーブル長によって移動を妨げることもありません。
例えば、玄関やベランダに出てバーチャルな風景を眺めてみてください。屋内では感じられない風・匂い・太陽光も加わることで、よりリアルな体験ができるようになります。
より自由で、自然に近い環境でVRを体験できるのは非常に魅力に感じました。
屋外で使う際は、周囲の安全確認を必ず行ってください。
○ メンテナンスがしやすく清潔に保管できる
「VIVE Focus 3」は手間なく清潔に保管することができます。
顔面を覆うフェイスクッションと後頭部を押さえるバックパッド、固定ベルトを簡単に取り外せるので、汗をかいた後でもサッと拭いておけるのは嬉しいポイントでした。
○ ハンドトラッキングの精度もすごい
事前設定をしておけば、コントローラーを床に置いてから手をかざすとシームレスにハンドトラッキングに切り替わります。
ハンドトラッキングはレスポンスが良く、精度の高さを感じました。(動画参照)
操作も直感的に覚えられるので、慣れてしまえハンドトラッキングでもある程度のことができてしまいます。
たまに不安定な挙動になったりもしたので、筆者はコントローラーの取り扱いに疲れたら気分転換にハンドトラッキングにして遊ぶ、みたいな使い分けをしていました。
△ 専用ケーブルや電源アダプタは別途必要
PCVRを行いたい人は、USB3.0ポートが搭載されたパソコンに加えて、USB 3.0以上(VIVE Focus 3に搭載されている規格はUSB-C 3.2 Gen 2)のケーブル(3m~
5m位を推奨)が別途必要になります。
USB Type-Cの電源アダプタをすぐ用意できますが、PCVRに必要はUSB規格のケーブルは慣れた人でないと難しいように思いました。
ヘッドセット横のUSB Type-Cポートに差し込めば同時充電できますが、充電時間ヘッドセットを使えないことになるので、効率良く使うなら電源アダプタも必要になるでしょう。
「VIVE Focus 3」だけでも高い買い物ですが、その他にも揃えるものがあることは事前に把握したほうがよいでしょう。
△ 専用コンテンツ少ない
「VIVE Focus 3」はビジネス向けのオールインワンVRヘッドセットであることから、「VIVE Business AppStore」にはビジネストレーニングやバーチャル会議、シミュレーション系の学習アプリなど独自のものが並んでいます。
エンタメ系のアプリもいくつか用意されてはいますが、「meta Quest」のアプリストアと比べるとラインナップが少ないです。野良apkもインストールできますが、公式のアプリストアと比べると若干不安です。
独自のビジネス系アプリは触りだけ見てみましたが、アバターやグラフィックが前時代的なところが少し残念でした。
バーチャオフィス・VR会議は興味深く感じたものの、リモートワーク・テレビカンファレンスと比べてVRを活用するメリットがあるのか、周囲の理解を得たり、複数人にデバイスを配布したりと導入・活用するハードルを高く感じました。
△ SteamVRもプレイできるが……
「VIVE Focus 3」はSteamVRで遊ぶこともできますが、事前セットアップと要件を満たしたPCが必要です。
特にPCはWindows10 OSマシンで、プロセッサにIntel Core i5-4590相当以上、GPUにNVIDIA GeForce GTX 1060 6 GB 相当以上もしくはAMD Radeon RX 580またはそれ以上、メモリ(RAM)は8GB以上とそれなりのスペックが求められます。
確かにワイヤレスでもサクサク利用できたので十分楽しめるのですが、潤沢に予算がないのであればのですが、VRヘッドセットはそれなりのスペックに抑えて他製品にして、PCスペックに投資したほうがハッピーかもしれないと思いました。
- 「VIVE Focus 3」に「VIVE Business ストリーミング」をインストール
- 「VIVE Focus 3」と同じWi-Fiに接続したパソコンに「VIVE Business ストリーミング」と「SteamVR」をインストール(初回の方はSteamアカウントも作成してください)
※USB-Cケーブルの有線接続も同様です。
メインはビジネス、エンタメはおまけ!な人におすすめのオールインワンVRヘッドセット
HTCの上位モデルだけあって、VR体験そのものは高いクオリティを感じられたスタンドアロンVRヘッドセットでした。
ただし、万人におすすめできるものではなく、どの用途に「VIVE Focus 3」を使うのか、はっきりとした目的を描ける人向けの清貧だと思います。少なくとも筆者のようなVR初心者が、たとえお金に余裕があったとしても、気軽に手を出すべきではないかもしれません。
自身の用途に合っているか、求める性能・パフォーマンスをクリアする機器なのか、お試しレンタルも活用しながら検討してみてください。
VRゴーグルは試してから購入できる
「一回でいいからバーチャル体験をしてみたい」
「使いこなせるのか不安だ」
そんな方にはVRゴーグルのお試しレンタルをおすすめします。
カメラ・家電レンタルサービスの「レンティオ(Rentio)」では、VRゴーグルのレンタルも提供しています。
レンタル期間中に気に入った製品があれば、そのまま購入もできますので、いくつか試してみてから購入を決めてはいかがでしょうか。
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